Trapping Quincy 運命に逆らうクインシーと王子の出会い 11 巻 - 表紙

Trapping Quincy 運命に逆らうクインシーと王子の出会い 11 巻

Nicole Riddley

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Chapter
15
Age Rating
18+

Summary

この巻は「Trapping Quincy 運命に逆らうクインシーと王子の出会い 10巻」からの続きです。

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暴露

クインシー・セント・マーティン

私のメイクは控えめ。私の好みだ。ダイヤモンドのイヤリングが耳たぶで輝いている。首と手首にはネックレスとブレスレット。髪をアップにして、手の込んだおだんごヘアにしている。

ソフィア王妃から送られた二つ目の箱に入っていたシンプルで美しいダイヤモンドのティアラが、私の黒髪に映えている。

アレクサンドロス国王は、招待客のリストを半分に減らして、当初の予定よりもはるかに小規模なイベントをするという形で譲歩した。舞踏会は盛り上がっている。私には小さく見えない。

「息をのむほど美しいよ、モヤ・プリンセサ(俺のお姫様)」カスピアンが私の耳元でささやく。

タキシード姿で私の隣に立つ彼はとても魅力的だ。彼の手が私の背中をなだめるようにさすり、体の緊張を和らげようとしている。今のところ、彼の手が私の腰から離れることはない。彼の心地よい温もりと素晴らしい香りに包まれていなければ、私はもっとストレスを感じていただろう。

私は群れのメンバーに囲まれている。

ジェネシス、セリーナ、ペニーはドレス姿でゴージャスだし、コンスタンティン、ラザルス、ダリウスはタキシード姿でとてもシャープだ。

彼らも決して私たちから離れようとしない。

いとこのジョナとジョーデンも私たちからあまり離れていない。彼らもタキシード姿で、こんなに格好いい彼らを見たのは初めてだ。彼らは見違えるようだ。

ダリウスは、かつて王室軍でともに仕えた信頼できる男女を連れてきた。ジェネシス、セリーナ、ペニーも顔見知りのようだ。女性は気さくないい人そうで、一目で気に入った。

ダンスホールは壮観だ。生演奏があり、ミュージシャンが優しくで心に響く曲を演奏している。大理石の床にはきらびやかなシャンデリアが輝く。

そびえ立つ天井は透明なガラス張りで、頭上には星と月が見える。中二階があり、扉を開けると眼下に渓谷を見下ろすバルコニーに出ることができる。

招待客の服装も豪華だ。

玉座は、大階段と舞踏場への大きな二重扉の入り口に面した、少し高めの台の上に置かれている。

ここにアレクサンドロス王とソフィア王妃が座って会場を眺めている。二人はさりげなく、でも厳重に警護されていた。彼らの左側には、国王が発表を行うために立つ演壇がある。

レディ・セレステは、王妃の隣のあまり凝った装飾のない椅子に座っている。クリーム色とゴールドのイブニングドレスが美しい。彼女の父親は今晩ここにいないが、母親はずっと彼女の横に立っている。

王妃の表情は決して感情を表には出さない。でもさっき私たちを見たときには、不服そうな冷たい風は感じなかった。まぁ、私たちを見つめる彼女の瞳に、少し温かみを感じた……、なんてことはないけど。

招待客のほとんどは貴族と高位のライカンだ。金髪の美女と一緒にいるエーミリウスを見つけた。ペニーは私が二人を見ているのを見て身を乗り出した。

彼女とダリウスにこの間の夜の私の勘違いについて話したら、それを面白がっていた。

「エーミリウスと一緒にいる女性は彼の母親、カーチャよ 」と彼女がささやく。

「ダリウスの叔母さん?」

背の高い女性だ。髪は白に近いほどのブロンドで、エーミリウスとダリウスの髪と同じだ。

顔立ちはエーミリウスとダリウスによく似てるけど、より柔らかく、より繊細だ。彼女はどちらかというと硬く身を固めている。楽しそうには見えない。それどころか、イライラしているようにも見える。

カナッペのトレイを持った制服の給仕が彼女に近づきすぎたとき、彼女は呆れたように手を振った。

「彼女はあまり友好的に見えないね」

「うん、彼女の工場出荷時の初期設定はビッチモードなんだ」とペニーはつぶやいた。彼女は経験から話しているように聞こえる。「家族よね」彼女はため息をつく。

「まあ、こういう催しに母親を連れてくるなんて、エーミリウスはいい人だと思うわ」と私は言う。

「彼はいつも宮殿の催しに母親を連れてくるのよ」とペニーは答えた。「あの惨めな女を家に置いてくればよかったのに」

***

私はセレステがゆっくりと演壇に近づいてくるのをじっと見つめた。彼女が要求を明らかにする時が来たのだ。

その代償が何なのかわからないため、私たちの群れに纏わり付く緊張感が伝わってくる。不安が重石のように胃に沈む。

アレクサンドロス王が皆の注意を促して、交配が今夜行われないことついて発表した後、部屋は静まり返った。何日も前から噂されていたことなので、これは誰にとっても驚きではない。

でも、サメが血の匂いを嗅ぎつけてボートの周りを旋回するように、観客がこのゴシップに飢えているのが感じられる。そこに立っているセレステの顔には恐れの表情がある。彼女の目は何かを探すように部屋を見回し、最後に強烈な視線が私たちに注がれた。

いや、ジョーデンだ。彼女の目には決意がちらつき、口元に落ち着きがある。

「私は新しい番いを選びたいと思っています」彼女が言う。「私はジョーデン・セント・マーティンを番いに選びます」

あちこちでため息がもれた。私の目はすぐにいとこを探した。

ジョーデンは衝撃と驚きと不思議さが入り交じる目でセレステを見上げ、彼女は期待と恐れの混じった目で彼を見つめている。ジョーデンが彼女を見つめ続ける中、彼女の唇には小さな笑みが浮かんでいる。

「違う!」彼女の母親が叫ぶ。「あなたは間違った選択をしてるわ! なんてことをしたの? だめよ!」

侯爵夫人の叫び声に続くように、さらに叫び声が上がった。群衆の中の女性たちからの叫び声だ。このとき私は、王立軍の軍服を着た衛兵が舞踏会場の入り口の扉をすべて閉めているのに気づいた。

私の番いは平気そうだったけど、彼の腕は私を守るように私を抱き寄せた。私たちの群れのメンバーも私たちの周りに近づいてくる。ジョナはジョーデンを私たちの輪の中に引き入れた。

混乱の中、エーミリウスとカーチャはアレクサンドロス王とセレステ夫人が立っているステージに果敢に足を踏み入れた。

慟哭が止み、ソフィア王妃が玉座から立ち上がる。

「何をしている? エーミリウス、カーチャ、これはどういうことだ?」王が二人に問いただす。

「私はあなたの長子に正当な居場所を与えているだけですわ」カーチャはアレクサンドロス王を見つめながら、息子の腕を掴んで言った。「私の息子。私たちの息子よ」

長子? 彼らの息子? どういう意味? 舞踏会場は大きな歓声に包まれ、そして突然の静寂に包まれた。

その沈黙は耳をつんざくようで、永遠に続くかのように思えたとき、私の番いが声を上げた。「父上、嘘だと言ってください」

アレクサンドロス王は何も言わなかった。でもカスピアンを見る目がすべてを物語っている。

私は横でカスピアンの体が硬直するのを感じた。傷と裏切りの突き刺すような痛みで、私の胸に鋭いものが走る。私は彼の痛みを感じている。

私は彼の腕を強く掴み、顔を覗き込む。彼はステージをじっと見つめている。その表情は冷たく、読めない。

「あなたの息子の正当な居場所は、あなたたち二人がいるべき下水道よ」とソフィア王妃は吐き捨て、カーチャを睨みつける。

彼女は激怒しているように見えるが、驚いているようには見えない。

「チッ、チッ、チッ、ソフィア」エーミリウスがからかうように諭す。「ベッドの中でも外でも、いつも爪だらけだ」

「エーミリウス!」アレクサンドロス王が怒鳴る。

「落ち着け、父上。私は宮殿を乗っ取ろうとはしているのではありません。それは愚かなことだ。ここは要塞のように厳重に守られている。被害妄想も甚だしいけどね。まぁ、少なくとも今夜は、誰も殺すつもりはない。私はただ、あなたにはエラスタイとの間に息子がいることを群衆に知らせ、私の権利を主張するために挑戦状を叩きつけに来ただけです」

「妾から生まれた私生児に王位継承権はありません」とソフィア王妃は言う。

「私は彼のエラスタイです」とカーチャは答える。「私の息子は契りによって生まれたのではありませんが、最初に生まれたのです」

「黙れ!」アレクサンドロス王が吠える。「カーチャ、馬鹿なことはやめろ」

「私は王位継承のために戦う機会を求めに来ただけです。あなたの尊敬する金色の息子と、死ぬまで戦う正々堂々とした勝負。私の弟とのね。父上、これは無理なお願いではありませんよね?」

「七つの契約(ルール・オブ・セブン)は行使せん。挑戦など認めるわけにはいかん」と王は告げる。

昔、ナナから教わった『七つの契約(ルール・オブ・セブン)』は、月の女神が七人の息子たち、最初のライカンを世に放ったときに生まれた話だ。

彼らはリーダーとしての権力をめぐって争い、一人を除いて全員が滅んだ。その一人が現在の世界のすべてのライカンのリーダーであり父親となった。

今日、群れや王が 『七つの契約(ルール・オブ・セブン)』を宣言すると、人狼やライカンは誰でも新しいアルファや王になるために死闘を挑むことができる。

「何もわかっていないらしいですな、父上」エーミリアスは父という言葉を呪文のように吐き捨てた。「あなたには選択肢はないんですよ。私は十分な支持者を得て……」

「ほとんどが犯罪者とならず者でしょ」ソフィア王妃が彼の言葉を遮る。

「犯罪者とならず者は最高の従者になる。彼らは危険で無節操だが、少なくとも自分の本性に正直だ。ここにいる偽善者ども——文化や礼節の仮面に隠れた怪物——とは違ってね」

エーミリウスはダンスホールの人々を見回す。

「とにかく、さっきの話に戻ろう。私は十分な信奉者を得たので、この地域の北の群れをすべて壊滅させる用意がある。今夜私を殺すか拘束すれば、それらの群れは滅びる。私の挑戦を拒否しても、それらの群れは滅びる。昨夜のことは、これから起こることに比べれば子どもの遊びだ。それに、あなたの臣下や従者たちは、自分たちが本当に正当な指導者を王位につけているのか、自分たちの指導者が指導するに足る強さを持っているのか、永遠に考え続けることになる」

「答えはノーよ!」ソフィア王妃が吠える。

「いいだろう!」カスピアンが唸る。「その挑戦、俺が受けて立つ」

えっ? いやだ! 私は彼の腕にしがみつく。でも、私の胸と頭の中の嵐を鎮めることはできなかった。だめだ!

「父上、この部屋から人を出してください」

アレクサンドロス王は衛兵たちに、唖然とする客たちを外に連れ出すよう命じる。

「あぁ、愛しのセレステ。あなたには失望しました」と、セレステが舞台から降りる前に、エーミリウスは言う。

彼が身を乗り出して耳元で何かをささやくと、彼女は顔を赤らめた。一体彼は彼女の何を握っているのだろう。

部屋はすぐに片付けられる。残ったのは、アレクサンドロス王、ソフィア王妃、カーチャ、エーミリウス、二人の王室顧問、アレクサンドロス王の護衛の一人、カスピアン、そして私だけだった。

「びっくりしたかい、弟よ。やっと自己紹介ができる」

エーミリウスの笑顔はとても親しみやすい。病的なまでに。

「それで、おまえはついに番いを得たんだな。素晴らしい! この瞬間をずっと待っていた。しばらくの間、素敵なセレステがお相手だと思っていたんだが、自分のためになることを選択したようだ。おまえは本当に期待を裏切らない。彼女はゴージャスだ! 王にふさわしい。残念だったな、彼女がおまえのものでいられるのもそう長くはないだろう」

「おまえの本当の望みなんだ、エーミリウス?」とカスピアンが訊ねる。

彼の声はあたかも退屈しているかのように聞こえる。でも彼がいてもたってもいられないほど怒っているのを私は知っている。彼の感情のない表情はソフィア王妃を思い出させる。

「ずっと私に与えられなかったものをすべて返してほしい」

「あなたは狂ってる」とソフィア王妃が叫ぶ。

「私は弟が持っているものすべてが欲しいのです」

「弟がちやほやされ、尊敬されるのを長い間見てきました。弟に相応しくないものはなにもない。誰もが彼に頭を下げる。誰もが王の甘やかされたガキを喜ばせるために身を屈める。そして今、彼は自分のエラスタイを見つけ、彼女を要求し、王冠を手に入れ、いつまでも幸せに暮らすことが約束されている」

彼はまた微笑みながらカスピアンに向き直る。

「君が番いを決めるのをずっと待ってたんだ。昨日の朝、朝食に招いてくれてありがとう。私の将来の財産をじっくり見る機会を与えてくれた。私が彼女を自分のものにするとき、どれほどの痛みを伴うだろうね」

「あなたに触られるくらいなら、死んだほうがましよ! あなたが私に手を出す前に、私はあなたを殺すわ」カスピアンが口を開く前に、私は激しく唸った。

彼の腕が私を締め付けるのを感じる。胸が熱くなる。

「気が強い! 私の好みだ。期待通りだな。私はいつも燃えるようなものが好きなんだ」彼の笑顔は威嚇的だ。

「俺の番いに手を出すな」カスピアンが唸る。

「戦いは明日に取っておけ、愛する弟よ」

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