パリの危険な恋　―目覚めた狼は止まらない―　３巻

ベル

オオカミはゆっくりと私に近づき、その間も強烈な視線を向けたままだった。私は震える呼吸を抑えながら、彼を見つめ返した。

彼は私の顔の真正面で立ち止まり、ふっと息を吹きかけた。

私はたじろぎ、さらに涙が流れた。

グレイソンは小さな声でうめいた。彼の濡れた鼻が私の鼻に触れた。そして、彼の舌が私の頬を舐め上げ、もう片方の頬にも同じことをした。

そのとき、彼が私の涙を舐めているのだと気づいた。しかし、それが慰めのつもりなのか、それとも私を食べるかどうかを決めているのかはわからなかった。

嫌悪感で再びたじろいだ。彼の唾液が顔中にまとわりつくのは嫌だった。

グレイソンが再びうめいた。彼は少し後ろに下がり、シャツが引っ張られるのを感じた。見下ろすと、彼が歯で引っ張っているのが見えた。

「な、何？」と私は尋ねた。

彼はシャツを引っ張り続け、私を少し前に引っ張った。

混乱して彼を見た。「何がしたいの？」

彼が私の言葉を理解できるかわからなかったが、彼はベッドの方を向いて、大声で吠えた。

「ベッド？」と私は尋ねた。

彼はまた鼻先で示した。

なぜ彼は私をベッドに行かせたいのだろう？そして、何より、そこに着いたら、私をどうしたかったのだろう？

「なぜ？」私はささやいた。

彼は何も答えなかった。ただ再び私のTシャツを口で噛みついて引っ張り続け、今度はもっと力強く引っ張った。

私は少し前に引き寄せられ、息をのんだ。「わかった、わかったから」

ゆっくりと床から立ち上がり、目の前のオオカミからは一瞬も目を離さなかった。彼は私の一挙手一投足を見て、一緒に動いていた。立ち上がったら、彼が実際にどれほど大きいかがわかった。立っているときでさえ、彼は私よりも背が高く、馬のように大きかった。

私は震える足でベッドに近づいたが、彼の毛が触れるのを感じ、グレイソンが近くにいるのに気づいた。彼はまるで私が今にも転びそうだとでも思っているかのようだった。

ゆっくりと腰を下ろし、深呼吸をした。

そして、オオカミの方を振り返り、「次はどうすればいい？」と問いかけるような視線を送った。

グレイソンは私の前に立った。彼は私の胸に鼻を押し当て、その鼻で私を慰めるように撫でた。

「私ーな、何？」といいかけて、バランスを崩して仰向けになり、天井を見つめた。ぱちりとまばたきをした。

ベッドが激しく揺れるのを感じ、グレイソンが私の隣に寝ようとしていることに気づいた。

彼がくつろぐのを警戒しながら見守った。グレイソンは寝転がり、前足に頭を乗せてから鳴いた。

「何？」と私は尋ねた。

彼は目を閉じ、喉を鳴らすような音を立てた。それは、いびきのような怪しげな音だった。彼は再び目を開け、私を見た。

「寝たいの？」

彼は吠えた。前に進んできて、私の腕に鼻で触れた。そして、私を見てまた吠えた。

「私が寝るの？」この時点で私は完全に混乱していた。

なぜ彼は私に寝るように言っているの？そんなことをして何になるわけ？

グレイソンは再び吠え、大きなオオカミの頭は素早く頷いた。彼は、まるで私がその場で眠りに落ちることを期待しているかのように私を見つめた。でも、私はそうはしなかった。

だって、どうやって眠りにつける？

彼は本当に美しい動物だったー恐ろしいけれども美しい動物。その体は目と同じくらい真っ黒で、力強かった。

目をそらした。ーこんな怪物に見惚れてはダメ。ー涙が流れ続ける中、私の視線は天井に戻った。少し落ち着いたが、それでも体は震えていた。

司会の端に、グレイソンが前足に頭を預けてふぅと息を吐くのが見えた。彼の視線を感じ、とても不安になった。グレイソンはオオカミに変身できるのだ。

私は人狼に誘拐された。しかも、彼は私を自分のものだと言っている。自制心のまったくない人狼だ。

これはまさに最高の状況ね！

多くのことが説明された。彼の色が変わる目も、ものすごく大きな筋肉も、彼の強さも。

きっとカイルが彼を「アルファ」と呼んだ理由にも何か関係があるのだろう。

アルファ、という言葉はオオカミと関係があるのだろうか？それともギリシャ語のアルファベットと関係があるのだろうか？

それでも、なぜ私が「ルナ」と呼ばれているのかは、まだわからなかった。誘拐された理由も謎だ。

あと、彼が私をどうするつもりなのかも、まったく見当がつかなかった。

私たちは1時間半ほどそのまま寝そべり、頭はあれこれ考え事でいっぱいの私を彼が見つめていた。アドレナリンが切れ、身体の震えがおさまった。頬の涙もようやく乾いた。私がグレイソンを見ると、彼はその動きに反応して頭を上げた。

「もう起きてもいい？」

彼は首を振った。

「どうしてダメなの？」

彼はただ頭を前足に戻し、目を閉じるだけだった。

答えは得られなかった。彼が昼寝をするつもりなら、私が起き上がるのを止めることはできない。

ゆっくりと体を起こして座った。しかし、彼はそれが気に入らなかった。立ち上がり、その巨大な前足を私の肩に置き、十分な圧力をかけて私を寝かせるようにした。

思わずため息をついた。

「寝れるわけないでしょ？だから、なんでここに横にならないといけないの？」

グレイソンはそのまま横になり、以前と同じ姿勢に戻った。

私は天井を見上げてため息をついた。彼の視線が私の体を這っているのを感じた。「あなたが私をじっと見ていると、絶対眠れない」

彼を見ると、その目はもう閉じられていた。

ーまあ、何もしないよりはましね。ー

こうしてまた耐え難いほど長い時間が過ぎた。混乱は増すばかりだった。彼は何を待っているのだろう？私にずっとこのままでいてほしいのだろうか？

もううんざりしていた。彼がどんなに大きくても、私をズタズタに切り裂くことができても、気にしなかった。もうただそこに横たわることはできなかった。

グレイソンに止められる前にベッドの端に着こうと思い、私は体を起こし、素早くベッドの端に向かった。

どうにか端までたどり着いたとき、グレイソンは私にとびかかり、体の両脇に前足を置き、うなり声を上げた。

「もうじっとしていられない！動かなきゃ！」私は怒鳴った。

彼はうなり声を上げ、私の胸に鼻を押し付けた。

私を押し倒し、再び横たえた。抵抗しようとしたが、無駄だった。彼は私よりもはるかに強かった。

私はかなり苛立っていた。

再び横になれば、彼が離れると思ったが、そうはならなかった。

その代わり、彼は私の上に横たわるようにして、お腹を私のお腹に押しつけ、両脚で体重を支え、頭を私の胸の間に置いた。ーまるで、私がどこにも行けないように。

「何してるの？」と私は尋ねた。

彼に動いてもらおうと、少しもがいたが、意味はなかった。彼はさらに体重をかけ、私を完全に動けなくした。私の腕さえも彼の下敷きになった。私はまったく動けなかった。

長い一日になりそうだ。